「1年を振り返って」
大隅鹿屋病院
4階西病棟
(循環器内科:整形外科病棟)
下高原 朱菜
都城看護専門学校
(H24年卒)
7月に入職してから早いもので8ヶ月が経とうとしている。
この8か月間で多くの患者様と出会い看護を行ってきた中で、一番印象に残っている患者様について記していこうと思う。
閉塞性動脈硬化症で入院中のAさんは、両下肢とも黒色壊死が進んでおり、右足はアンプタ(四肢の切断・切除術の意味)を行い毎日洗浄し、ガーゼ保護を行っていた。
入院した最初の頃は、少量ずつではあったが食事摂取も出来ていた。「もう少し食べれますか?」
と声掛けすると、首を横に振ったり頷いたりと、自分の気持ちを伝えることが出来ていた。
しかし、入院期間が長くなるにつれ食事摂取も減り、最終的に摂取出来なくなりました。
だが、声掛けに対しては開眼され、かすかではあるが頷きがあるので少し安心はしていた。
・
ある日の朝、私はいつものように出勤し、受け持ち部屋の情報をとっていた。
すると、AさんのモニターがVF波形(心室細動波形の事で、心臓のポンプ機能がほとんど動いていない状態)になり、部屋を訪室するとすでに心停止していた。
出勤していたスタッフと部屋移動を行い、AさんはDNRの為、特に処置などはせず家族の到着を待った。その後、リーダーより「死後の処置をしたことがある?」と言われたので「ないです」と答えると、「してみようか」と言ってもらい私はスタッフと一緒に死後の処置を行った。
死後の処置をするのは初めてでとまどっていたら、「いつも患者様に清拭するように丁寧にしていけば大丈夫」と言われ、緊張がほぐれ最後まで処置をすることが出来た。
死後の処置が終わり、家族江声掛けを行った。
家族に「長い間、本当に有難うございました」と言ってもらい、私は思わず泣きそうになった。
家族が一番辛いのに、私たちにこのような優しい言葉かけをしてもらい、とても胸がいっぱいになった。私はただ「有難うございました」と言うことしか出来なかった。
死後の処置を終え、Aさんの最期をしっかり看取ることが出来、Aさんの死を通して「看護師になって初めて死後の処置をさせてもらった事」「死後の処置の方法」「家族との関わり」などを学ぶ事が出来た。今まで、死を迎えた方の身体に触れたり体温などを感じる事がなかったので、死後の処置を通して改めて実感することが出来、また自分の中で一つ成長出来たような気がした。
今回は家族の方に、しっかりとした声掛けが出来ていなかった為、今後は家族の方の思いなどを理解し話を傾聴出来るようにしていき、家族の心のケアまで出来るようにしていきたい。
又、死後の処置では暖かいお湯を使用し、患者様が寒くないように手際よく丁寧に行い、その方の人生を尊重した気持ちで行うことが大切だと感じた。
看護師として出来ていない所や、気持ち的に落ち着いて処置が出来ていなかったので、自分の未熟さを改めて実感する事が出来た。だが、その中でスタッフのフォローや指導をしてもらい、先輩方に支えてもらって日々の仕事が出来ているのを感じた。
一人では不安な時には一人で解決しようとせず、周りのスタッフに相談しアドバイスをもらう事で、今後の自分自身の成長に繋がっていけると思う事が出来た。
Aさんのような患者様にも慌てることなく、落ち着いた対応が出来るようにしていきたい。
又、患者様の家族にもしっかりとした言葉かけが出来、安心してもらえるように関わっていきたい。
自分一人で働いているわけではないので、周りに相談し適切な看護をしていけるような、立派な看護師になりたいと思う。
「一年間を振り返って」
4階西病棟 実地指導者
新地 梢
入職して8ヶ月経ちましたね。どんな8ヶ月だったでしょう。
久しぶりの臨床の場と、初めての循環器・整形病棟。
私も昨年4月に転勤してきて初めての事ばかりの毎日に、戸惑いと葛藤があったことを覚えています。そんな中で入職してきた下高原さん。おとなしくて、おしとやかで。
何かとキャラクターの濃いこの病棟で「頑張って行けるかな」と心配にもなりました。
毎日わからない言葉や初めてみる機械などで不安だったと思います。
そんな中プリセプターが途中で代わってしまい、さらに不安だったのではないでしょうか?
私も何とか慣れてきた業務の中でプリセプターを任され、「こんな私でいいのか」と不安になりました。でも、「一緒に成長していこう」と心に決めて関わるようにしました。
解らないことなどを遠くから走ってきて、私に聞きに来てくれたりしましたね。
なんか嬉しかったです。しばらくすると、同期のスタッフとも打ち解け、固まっていた表情も段々和らいできて、同期同士で相談しあったり励ましあったり出来たのではないでしょうか?
同期は”宝”です。これからも大事にして下さい。
日々業務を行なう中で、楽しいこともあれば辛いこともあると思います。
中でもエンゼルケアは初めてのことで、とても戸惑ったかと思います。
出来れば人の”死”には関わりたくないですよね。でも私たちはそれから逃れることは出来ません。
その人をなるべく綺麗な状態で見送れるように、日々関わっていくことも大事だと思います。
2年目になると少し心に余裕が出てきて、少し視野も広がり、色んなことに興味を持って勉強できると思います。もうすぐ後輩も入ってきます。下高原さんたちが一番身近な先輩になるでしょう。
何を聞かれても自信を持って答えられるよう、教えられるようになって欲しいです。
これからも、あなたは大事な4階西病棟のスタッフの一員です。一緒に頑張っていきましょう。
他の施設に勤務しながら通学して国家試験に合格。当院に途中からの新卒入職者として今日まできました。入職当初は、中々なじめていませんでしたね。
新卒の他のスタッフにも、やや気後れしたのではないかと思います。
しかし、そこは頑張り屋の根性がでてきました。解らない時は、実地指導者を見つけては走って聞いていました。微笑ましく観察!させて頂きました。そして優しく、穏やかに微笑みながら話を聴いてくれる、そして真剣に患者様、ご家族様と向き合い対応してくれました。
日々患者様、ご家族と関わることで見えてくる背景。看護師は「疾患」だけをみて看護は出来ません。その方の人生、ご家族との関わりなど背景も踏まえて「看護」になります。
「ゆりかごから墓場まで・・・」という福祉制度の言葉があります。
看護師という職業にも合っている言葉ではないかと思います。命が芽生えた時から看護師は関わり、最期を迎える瞬間も関わることが出来る唯一の職業です。
様々な経験をして「観て」「触れて」「聴いて」「感じて」「看て」「考える」ことで自分も成長していくと思います。今までしてきた努力は、必ずどこかで報われます。ひとつ、ひとつ、前に、前に進むことが大切です。私たち看護師が「有難うございました」と言える看護をこれからも一緒にしましょう。
0 件のコメント :
コメントを投稿
コメントの記入者の欄は「名前/URL」を選択してください。
記入は名前だけでもかまいません(^_^)。